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保健学科検査専攻 実際の現場から 

大学病院で働く検査技師さんへの特別インタビュー。
めったに聞けない貴重なお話を伺いました・・・

東北大学病院血液検査分野で勤務されている臨床検査技師の 牧さん、大久保さん、菅原さん にインタビューし、検査技師について、働くことについてなどをお話していただきました。

インタビュー内容は以下の順に記載しています。
①臨床検査技師の仕事、病院における役割
②働くうえで大切にしていること
③臨床検査技師として働いて感じるやりがい
④今後、臨床検査技師に求められること
⑤受験生へのメッセージ

 
働いていても学び続けることが大事 (牧さん)
①患者さんから採った検体を使った検体検査と、患者さんの身体の状態を調べる生理検査に大きく分かれていて、医師から検査の依頼を受けて検査をして報告するという役割があります。検査技師が行える業務として、採血業務があります。看護師が行っているイメージがあるかと思いますが、大きな病院だと検査技師が行っていることが多いです。また検査技師というと、レントゲンやってる人?と言われることが多いのですが、放射線を使ったレントゲン検査やCT検査は放射線技師が行っています。一方でMRIは磁力を使ったものなので、放射線技師が行うことが多いですが検査技師も行うことができます。
 
興味をもっていくことがすごく大事なんじゃないかなと思います。医療の分野は情報の更新が早く、各病気に対するガイドラインはたくさんあるんですが数年周期で改定されます。自分で興味をもって情報を拾うということをしないと取り残されてしまう。情報の更新に対応するために、興味をもって自分で勉強していくこと、その気持ちを大事にしています。

③検査技師の仕事は直接患者さんと接することが少ないので、直接的に患者さんの役に立っていると感じにくい部分もあります。ですが、検査をしている中で自分が気づいたことが直接患者さんの診断に結びついていて、例えば血液の分野であれば、標本を見て変な細胞がいるなと思って医師に報告したら本当に悪性だったということがあると、患者さんの役に立てているなとやりがいを感じることができます。また、癌をはじめ病気は早期発見が治療や予後に繋がりますが、早い段階の病気は症状が出にくいため検査の分野が重要になります。早期発見にかかわることができることが検査技師のいいところなんじゃないかなと思っています。

主体的、積極的に学ぼう

④AIが発達していったときに検査技師の仕事がなくなってしまうと聞いたことがあると思います。数年前、将来AIに取って代わられる仕事は49%といわれていましたが、実際のところ本当に無くなる仕事はそんな多くないんじゃないかともいわれています。各仕事の人たちがAIと共存していくために変わっていくことができるから、なくならないんじゃないかという考え方です。結局それって自分で変わっていけるかどうかなんですよ。今の検査技師のままで10年、20年いたとしたら確実に仕事がなくなってしまうと思うので、自分で新しいことを始めるような積極性がこれから自分たち若い世代に求められるんじゃないかと思っています。

⑤検査専攻って専門的な分野なので、自分に合わなかった場合を考えて不安な人もいるんじゃないかと思います。しかし、検査技師の資格を取った後でもいろんな進路がありますし、検査が合わなくても他の分野に進んでいった人たちもいっぱいいます。進路は様々あるので、今はとりあえず自分が行きたいと思ったところを信じて勉強を頑張ってほしいなと思います。

 
「検査をして、返す」だけじゃない (大久保さん)
①診断や治療をするにあたって適切な検査結果を返さないと、診断が間違って違う病気にされてしまいます。医師が正しい診断を出せるように、私たちは身体の状態を正しく調べて結果を返すという役割があります。

②常に新しくなっていくので、新しい情報を入れて時代の流れについていくことを大切にしています。

③患者さんのためにもなるので、珍しい病気や新しいものを発見したときよかったなと思います。

④日常通りやっていても、新しい病気があったりどんどん診断基準が変わったりするので、新しい情報を入れて考える力が大切になってくるのかなと思います。マニュアル通りやっていても病気を見逃してしまうことがあるので、自分の中で解釈し、新しい検査を医師に提案して実際に実施してみるということも大事ですかね。実際病院で働いていると、医師が思っている病気じゃないことがよくあるんですね。診断と実際の病気が違うんじゃないかと感じたときは、この検査もした方がいいんじゃないですかと提案することも必要です。

⑤検査技師自体、目立つ仕事ではないですが、患者さんのためになる、人のためになるということで非常に有意義な仕事だと思います。またわからないことがいっぱいあるので、どんどん新しいことを求めていくという刺激的な仕事ではあると思います。大学卒業してから40年くらいは働くと思うので、同じことが続くような仕事がいいのか、それとも新しいことをどんどん求めていく仕事がいいのかということを考えるといいと思います。とりあえず何の職業をするにも大学に受かるということがスタートだと思いますので、勉強頑張ってください。

 
仕事を、楽しむ (菅原さん)
①検査技師の仕事内容は規模によるところもあります。小さいクリニックで働いている検査技師は検体採取から患者の介助、雑務もこなしますし、中規模の総合病院だといろいろな分野を兼務することが多いです。大学病院など、規模が上がれば上がるほど専門性も増し、分野が細分化されていきます。例えば東北大学病院では、血液検査、生化学、微生物、・・・といった感じです。
 検査技師の役割は患者さんの病気を見つけることです。たとえば患者さんは何か具合悪いといって病院にかかりますよね。そこに問診とか触診だけではわからない重篤な疾患が隠れているケースももちろんあるので精査をしなければならない。たとえば血液検査、エコー検査、心電図、脳波検査などを行って、患者さんの病気をいち早く見つけるのが検査技師の責務になります。また我々は病院内で検査の情報、つまり患者さんの情報を扱うので個人情報を保護しなければならないですし、またその情報の正確性を保たなければならないので、情報をしっかり扱うということも検査技師の仕事です。

②まず仕事という面では楽しむこと。楽しむとパフォーマンスが上がるんですよ。検査は人を扱うという医療の側面もあるんですけど、化学でもある。化学に興味をもってこの職業を選ぶっていう人もいるかもしれないですけど、(私顕微鏡めちゃめちゃ好きなんですけど、)自分の好きなものを楽しむことはモチベーションを上げるという面で大事だと思います。
検査技師としては、患者のためにということを念頭に置いています。生理検査と違って検体検査だと、大量の検体を扱うのでだんだん麻痺してきます。ただその検体は、1患者1検体なので患者さんを扱うのと同等なわけですね。なのでただ単純に検査するだけではなくて、患者さんのためにどうしたらいいかと常に考えています。また検査室にこもっているだけではなく、ドクターにアプローチしてみるといった行動力も大事になります。

この先、人ができることは何か

④医療の現場の情報処理能力も上がっています。診断支援システムというものが出てきていて、いろんな検査情報をAIが考えて、こういう疾患ですよと可能性を出してくれる。そういう段階なので、人ができることは何かって常に考えないといけないです。検査はオートメーション(自動化)が進んでいます。検体流してポン、アルバイトでもできるくらい。誰でもできてしまうからこそ、その測定がどうなっているか、そのデータが何を示すかを常に考え、そのデータを臨床や患者さんにどう還元していけるかということを考えるのが大事ですね。おそらく思考をとめると自動化の波にのまれてしまって、「検査技師」という名前が付いただけになってしまう。人ができることを売りにして、自分で行動しないと取り残されてしまう可能性もあります。
また大学病院はいろいろ研究要素がありますが、ただ研究したからいいってものでもなくて、研究したものがどう使われていくか、どう使ってほしいか、何に役立つかっていうところまで考えて研究するといいんじゃないかなって思うんです。それも患者さんのためですよね。ただ楽しむことも大事なので、単純にこれ面白そうだなっていうことを常にやっていけば、それが自然と患者さん、社会に役立っていくということもありますね。

初心を忘れるな。動機を大事にすること。おそらく実際に職場に出てみるとギャップって絶対に出てくるんですよ。ただ、ずっとそのギャップが続くのではなくて、自分がもともとこうしたい、こういうのに憧れると思ったものを実現することはできるんです。だから最初に自分が持った憧れを常に持った状態で、アップダウンはありつつも進んでいけば、その先で必ずなりたい自分にはなれるんじゃないかなって思います。ただだいぶ右往左往しますけどね(笑)。常に楽しむスタンスで自分の気持ちを忘れずにいることが大事なので、あなたが志したその気持ちを常に大事にしてください。

いかがでしょうか。
検査専攻を卒業後はさまざまな進路選択がありますが、病院勤務にも興味を持ってくれれば嬉しいです。